第二次世界大戦後、家制度は廃止されましたが、「家」の意識に基づいた結婚観は今もさまざまな形で残っています。たとえば、婚姻時は夫婦の新たな戸籍を作るのに、「入籍」「A家の嫁になる」など、女性が夫の家に入るような言い方をしますよね。女性側の改姓が9割以上というのもその名残でしょう。
一方で、結婚に至るプロセスはといえば、60年代後半~70年代前半に「見合い結婚」と「恋愛結婚」の割合が逆転しました。きっかけは、55年ごろに始まった高度経済成長です。
企業が集中する都市部に地方から働き手が一気に流入。彼らは親元や地元を離れたことで、自由を手にしました。73年に発表され流行したフォークソング「神田川」にも、狭いアパートでも二人で暮らせば幸せだ、という自由恋愛への憧れが表れています。
このころの結婚の標準は、夫が一家の稼ぎ手として企業に勤め、妻は家事や子育てに専念する専業主婦家庭。経済的に余裕のある家庭も増え、80年代初頭まで、既婚女性の約7割は専業主婦でした。
また、核家族化が進み、「一家の主たる男が外で働き、女は家庭を守る」という価値観が定着したと言えます。
さらに、18~19世紀のヨーロッパで生まれたとされる、恋愛・結婚・出産の3つをセットで考える「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」が日本に浸透。
男女が結婚を前提とした自由恋愛の末に結ばれ、子どもを産み育てることこそが《美しい》とされ、高度経済成長期以降の恋愛や結婚の常識として深く根づいていったのです。