「結婚をとりまく世の中の動き」年表
●結婚をとりまく世の中の動き

社会学的に見ると、86年に放送された『男女7人夏物語』が、結婚を前提としない「自由恋愛」を当たり前にした初めての国内ドラマだとも言われています。

70年代から80年代前半までのファミリードラマは、お見合いにせよ恋愛にせよ性交渉は結婚後、という暗黙の了解のもとに描かれていました。

たとえば、70年代の大ヒットドラマ『寺内貫太郎一家』では、樹木希林さん演じるおばあちゃんと浅田美代子さん演じるお手伝いのミヨちゃんが、婚前交渉に関する週刊誌記事を読みながら「信じられない」「なんてハレンチな!」と言い合う場面が出てきます。

一方、『男女7人~』は、前日まで見知らぬ他人同士だった明石家さんまさん演じる良介と大竹しのぶさん演じる桃子が、朝、同じベッドで寝ているシーンから始まるのです。良介は「酔って記憶がないけれど、昨夜この子と寝たかもしれない」と友だちに電話して自分の行動を確かめる。

これはつまり、結婚を前提としないセックスをしてもかまわないのだと、明確にドラマの中で描いたということ。

そうした自由恋愛の頂点のような作品が、91年のドラマ『東京ラブストーリー』でしょう。鈴木保奈美さん演じるアメリカ帰りのヒロインが、同僚である主人公の男性に「セックスしよ!」と堂々と言うのです。女性からそんな台詞で男性を誘うなんて、と当時の視聴者は衝撃を受けました。

このように、当時の映画やドラマは、時代の空気感や概念を投影する映し鏡でもあるのです。