若者がパートナーに求めるものは

ところが、90年代半ばごろに変化が訪れます。それは、恋愛や結婚をしない若者の増加です。

女性の結婚観が変わった一つの要因は、働き方の変化でしょう。90年代後半、男女雇用機会均等法が改正されると、職場での女性への差別的扱いが完全に禁止されました。また、コンプライアンスも厳しくなり、独身者に「まだ結婚しないの?」などと聞くことがハラスメントとされるように。

女性は、働き続けても追い出されない職場が増えたことで一定の経済力を得、自由に生き方を選べるようになった。それによって晩婚化や未婚化へと向かい始めました。

一方、男性の未婚化には、バブル崩壊と経済不況も大きく影響しているでしょう。90年代前半にバブルがはじけ、05年ごろまで就職氷河期が続きました。その影響でリストラや非正規雇用の割合が拡大し、収入が少なく30代になっても親元で生活する「パラサイト・シングル」が急増。直近でも、30代男性の約1割を非正規雇用が占める状況です。

さらに近年は、学生時代から「奨学金」という名の借金を背負う若者が、四年制大学の学生のうち約半数もいる。彼らは経済的な理由から、「結婚は嗜好品」「子どもは贅沢品」だと次々に口にするのです。

また、2000年代に入ると、結婚・出産後も共働きが標準になりました。家事や育児を自分たちだけでは賄えず、実家近くに住居を構える夫婦が一般化。今や結婚後、実家から30分未満の距離に住む夫婦が6割を超える時代です。

特に「妻の実家の近くがいい」と希望する新婚夫婦が多く、夫が「妻の実家の近くで子育てをしたいから転勤させてほしい」と希望する、との話も耳にします。

さらに、若者が「結婚」や「恋愛」に求めるもの自体が、「恋愛結婚が当たり前」だった世代とは大きく変わってきています。

ロマンティック・ラブが美化された時代に多くの女性が恋人に求めたのは、夜景が見えるおしゃれな店へのエスコートや、甘い言葉――その先に結婚というゴールがあった。

ところが、今や39歳以下の若い世代は、結婚の条件として、男性の半数が女性に「経済力」を、逆に女性の9割以上は男性に「家事・育児の能力や姿勢」を求めている。共働き家庭が一般的になった今、結婚後の生活を現実的に考えるのは当然でしょう。

一方で、恋愛相手に対しては変わらず女性に「女らしさ」を、男性に「男らしさ」を求めています。結婚相手に求めているものと真逆ですよね。その矛盾に気づいた若者たちが、「恋愛と結婚は別もの」だと考えるケースが増えているようです。

また、02年に離婚件数がピークを迎え、若い世代の親や身の回りに離婚経験者が増えたことが影響しているとも言われます。いくら情熱的な恋愛結婚をしても、浮気などから離婚する人も多い。「恋愛力」など結婚後は邪魔なだけ、と感じる若者もいるのです。