「ベビー笠置」
この年1月10日から17日まで、日劇では灰田勝彦の「ラヴ・パレード」十二景(作・演出・白井鐡造)公演が行われ、美空ひばりがシヅ子の「ヘイヘイブギー」を歌わせて欲しいと、有楽座「愉快な相棒」出演中の笠置と服部に許可を求めた。
服部は、ひばりには「東京ブギウギ」が相応しいと判断して、曲の変更を伝えた。
しかしひばりは「東京ブギウギ」を練習していなかったために、出だしを失敗してしまった。
その話に尾鰭がついて、笠置と服部がひばりに「歌うな」とクレームをつけたということになってしまったが、真相はこうである。
とはいえ5ヶ月後の映画『びっくり五人男』での、ひばりの「東京ブギウギ」のパフォーマンスは見事である。「ベビー笠置」と言われたのも頷ける。
8月10日、ひばりは、松竹映画『踊る龍宮城』(7月26日公開・佐々木康)の挿入歌「河童ブギウギ」(作詞・藤浦洸、作曲・編曲・浅井挙曄)でレコードデビューを果たした。
実はこの時、コロムビアでは、ひばりのデビュー曲を「東京ブギウギ」にしようという案があったが、笠置と服部がそれに反対した。
ひばりの力量を考えてデビュー曲はオリジナルが相応しいと判断したからだろう。
「河童ブギウギ」はヒットに至らなかったが、9月発売の第二弾「悲しき口笛」はまさにひばりのオリジナリティーあふれる楽曲で、彼女の「これから」を決定づけた。
※本稿は、『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(興陽館)の一部を再編集したものです。
『笠置シヅ子ブギウギ伝説』(著:佐藤利明/興陽館)
2023年NHK朝の連続テレビ小説、『ブギウギ』の主人公のモデル。
昭和の大スター、笠置シヅ子評伝の決定版!半生のストーリー。
「笠置シヅ子とその時代」とはなんだったのか。
歌が大好きな風呂屋の少女は、やがて「ブギの女王」として一世を風靡していく。彼女の半生を、昭和のエンタテインメント史とともにたどる。