時間を忘れて夢中になれる空間
その水槽をしばらく眺めていると、光と影による面白い現象が起きる事に気付いた。それは照明の下を泳ぐ「ある魚」の影。普通の魚は普通の影が映るが、カレイが泳ぐと菱形の影が見える。そして、カレイが壁と照明からの絶妙な距離のところを泳ぐと、一瞬だけ「泳ぐダイヤモンド」に見えるのだ。しかしこのタイミングがなかなか難しい。カレイの位置が少しずれたりすると映らない。そして、時には他の魚が映り込んでしまう。
気が付いたら1時間が経ってしまった。それだけ夢中になれる空間だったということだ。そして再び外に出ると、眩しい日差しの下にゴマフアザラシが日光浴をしていた。水族館の壁の向こうには見事に冠雪した利尻山の姿が見えていた。列島最北端にある水族館ならではの見事な光景であった。
◆令和6年能登半島地震への募金で、野辺地氏の作品がもらえます。
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野辺地ジョージ
写真家
1980年東京都生まれ、軽井沢町在住。
2002年カナダ・ブリテイッシュ・コロンビア大学人文学部卒業。大学卒業後、2014年まで金融業界でトレーダーとして東京やニューヨークで活動。同年ニューヨークの写真祭「Photoville」に感銘を受け、写真家への道へ。約3年に渡りアメリカ西部を旅しながら写真を学ぶ。2017年、日本を本拠地として国内外で活動を続ける。
2020年のコロナ流行の初期に、Michael Kenna やJane Evelyn Atwoodなどの著名写真家のオンライン・トークシリーズを創設し、36回の講演会で視聴者から総額7万ドルを集め、全額寄付した。2021年長野県軽井沢町へ移住。現在も写真活動と共に国内外で写真家の育成や地方活性化を目標としたイベントを企画している。また、軽井沢フォトフェスト(KFF) の総監督も務めている。
2022年にはFUJIFILMのX-Series10周年を記念するドキュメンタリー「Reflections」に出演、司会役も務める。イタリア、アメリカなどで多数の個展を開催。
30以上の国際的な賞を受賞。2022年より『東京新聞』の月刊連載シリーズ「水族館百景」を連載中。Patricia Conde Galeria(メキシコ)、 Webster Collection(米) ギャラリー所属
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