彰子の女房はなんと40人

さらに物語が進んで、中宮・彰子に仕えるようになれば、まひろも女房装束(「唐衣裳」、いわゆる「十二単」のこと、詳しくは本連載4参照)を着ることになります。普段の袿姿とは違った、華やかな正装が見られることでしょう。

最初の女房名が「藤式部」なので、テーマカラーはやはり紫色ではないか、などと想像しています。

余談ながら、平安時代において紫は天皇をはじめ高貴な人々が好んだ色だったそうです。「桔梗のかさね」「藤のかさね」など、『源氏物語』にも紫系の色の描写があちこちに登場します。

紫が高貴な色として考えられた理由のひとつに、染めるのに非常に手間のかかる色だから、ということもあったとか。つまり、限られた人しか身に着けることのできない、あこがれの色だったのでしょう。

彰子の入内にあたって、道長は、選りすぐりの女房を、なんと40人も揃えたそうです。容姿、家柄ともに申し分のないお嬢さまが集められたのですが、それでも、評判の高かった定子のサロンに比べると魅力に乏しく、精彩を欠いていたようです。このままでは一条天皇の気を引くことはできないと、紫式部に白羽の矢が立ったわけです。

40人もの女房が居並ぶさまは、ドラマではさすがに再現できないとしても、最近の放送回では、色とりどりの唐衣裳をまとった女房たちが多数登場しています。まさに眼福。まひろの出仕後は、さらに壮麗な宮中のシーンが見られるかもしれません。

平安京が舞台である今年の大河ドラマの見どころのひとつに、こうした装束の美しさ、豪華さがあることは間違いありません。とはいえ、これだけの衣装を用意するには莫大な制作費がかかっているはず……。舞台裏がちょっと心配になるほど、目に贅沢なドラマだと思います。

平安時代の女房の“仕事着”でもあった「唐衣裳」(提供・「雪月花苑」)