無人島の事情

ご存知の通り、日本は島国である。日本には周囲の長さが100m以上の島が約1万4125個もある。

このうち有人島は420島ほどしかないので、ほとんどの島が無人島だと言える。

『無人島、研究と冒険、半分半分。』(著:川上和人/東京書籍)

このため、もし島をくじ引きにすれば高い確率で無人島を引き当てることになるので、南硫黄島が無人島であることはそれほど不思議なことではない。

しかし、そんな群雄割拠の無人島の中で、南硫黄島は他にはない類稀(たぐいまれ)なる魅力を持っている。それは、過去から現在まで人間の利用と影響を拒み続けたことにある。

南硫黄島の面積は3.5平方キロメートルある。これだけの面積があれば多少なりとも人間が利用していてもおかしくないので、これは非常に珍しいことだ。

日本人は昔から島に行くのが大好きだ。たとえば、考古学的な証拠によると伊豆諸島の神津島(こうづしま)には3万8000年前に人が行き来していたという。

島が好きなのは日本人だけでない。

太平洋の真ん中に浮かぶハワイ諸島には2000年以上前から人が住み、太平洋東南の果ての果てにあるイースター島では約800年前からモアイが作られている。

たとえ洋上の孤島であっても、そこそこの面積があればたいていは人が到達し、利用し始めるものだ。

火山列島でもそれは同じはずだ。実際のところ、北硫黄島や硫黄島には19世紀から人が住んでいた。

それだけでなく、北硫黄島ではマリアナ系文化の特徴を持つ先史時代の遺跡も見つかっており、人間の入植の歴史は1000年以上前にさかのぼるともされる。

平らな土地が広がっている硫黄島にも、おそらく先史時代の入植があったことだろう。