(『光る君へ』/(c)NHK)

吉高由里子さんには懐の深さを感じる

そんな道長は、まひろにだけ、本気を出せるんですよね。愛し合うということにしても、憎み合うということにしても、弱みを見せられるということにしても、何にしてもできる相手。だからこそ、良くも悪くも歪みあったり、怒り合あったり、極端な話でいえば本気で決別できたり。中途半端がないところが、ソウルメイトという関係性といえるのだろうと。

まひろは、道長の子どもをなすわけですが、この展開は現場で大石静さんや制作統括の内田ゆきさんから、風の便りを含めて聞いていたような気がします。いざこの展開となった時には、まさかと思いながらも、このチームはそういうことをするんだという、覚悟を感じずにはいられなかった。決断したこのチームに勇気をもらいました。

第28回で道長が倒れた際、嫡妻・源倫子(黒木華)ともう一人の妻・源明子(瀧内公美)のやりとりが注目されたそうで、昨日もそのシーンと関連するところを撮っていたんですが……まあ、鈍感ですよ、道長は。やらかしています(苦笑)。そこに関しても、プライドを持つことなく、それこそ三郎ののんびりしたところが悪いほうに出ているかもしれないけれど。自分なりには、楽しみながら演じている部分でもあります。

まひろ/紫式部役の吉高由里子さんには、やはり懐の深さを感じますね。まひろと道長の長くて強度のあるシーンが時折出てきますが、セリフのやりとりから、大石静さんが書かれるト書きで「……」としか書かれていなところに対して、「こういう風な表情をされるんだ」という新たな発見もあって。それならば道長はこういう表情になるかな、と大石さんの台本が導いてくださるところに吉高さんの具体的なお芝居を見て、またさらに新たなところに連れていってくださるので、本当に引っ張っていってもらっているところが非常に大きいです。

大石さんの台本には、「……」という表現が多いのですが、「……」のあとには(○○という気持ち)と、気持ちの方向を示してくれている部分があって。ここを好きに表現していいというよりは、ここはこっちですよ、と一つずつ丁寧に言っていただいている感じです。だから、僕らはそれを大石さんからの挑戦状のように受け取る時もあって、役者としては挑戦しがいがありますね。