「心配ありません」

なんの処置もできぬまま、数ヵ月に一回顔を出してくる憎き内出血。人間ドックでもちらりと相談したものの、皮膚科医師2人と変わらないこと言われてしまった。

ただ希望の光なのかは分からないが、内出血の消えるスピードが早くなった。おそらく去年から意識して続けている1日2リットルの水分が、功を奏したらしい。どんな病気にも血流は関わってくるとは聞くし、血流を良くするためには水分補給が有効だとも。だからと言って、内出血の出没を完璧に遮断できたわけではない。

専門医を調べて他の病院へ行くべきだろうかと、思いあぐねていると、かかりつけの婦人科医師から思いもよらぬ意見を得られた。もうセカンドならぬ、サードオピニオン。この婦人科には、ピルと漢方薬を処方してもらったり、女性特有の不調を相談したりするために15年近く通っている。おそらく70代の男性医師はとても説明が上手だ。私のようにライター、編集業と「ソースを取ること」を生業としている職業は何かとうるさい。重箱の隅を突くように、次から次へと質問を医師に浴びせて解決策を求めてしまうのだが、彼は昔から徹底的につきあってくれる貴重な存在だ。

「先生、そう言えば、私、こんな内出血が時折出てくるようになりまして……がんか何かじゃないかと……」

「小林さんはすぐに大病と結びつけたがりますが、それはないですね。大きな病気であれば、この内出血がもっと多く出ます。原因として気になるのは、汗もそうですけど、今日つけているネックレスが触れていることも考えられますね」

「これパールですよ? 金属ではないです」

「ただ同じ位置に内出血が出ているというのは、その位置で皮膚が何かに触れて、摩擦を起こしているということです」

「ほほう」

「それが以前の皮膚科医の方がおっしゃる通り、かゆみで寝ている間に掻いている可能性もあります。小林さん、更年期ののぼせが出ていますから、その発汗も原因かもしれない。もし大きな病気なら、この内出血が体中に出ます。同じ位置に出ているなら、大きな病気の心配はありません」

慣れ親しんだ医師の診断は、散々悩んできた心の傷口に沁みた。専門医たちと同じような診断なのに、脳がこの診断を吸収しようとするのは、信用問題だったのかもしれない。私の脳、ややこしいな、と思いつつ、この日からネット検索をすることをやめた。だからと言って内出血は止まったわけではない。出没頻度が下がっていることと、サイズが小さくなっていることが救いだろうか。

セカンドオピニオンに関してはもうその人の判断によるもの。問題は本人が納得できるかどうか、だ。あくまで私のケースではあるが、困った時に何もかも話せるような“かかりつけ医”がいると、とても助かる。何より気持ちが安らぐ。プラシーボ効果と似ていて、信用している医師の診断は何よりの処方箋になる。

ちなみに私は地元にも同じように「なんでも診てもらうおじさん」こと、家族で世話になっている医師がいる。上京してしばらくはドクタージプシーになっていたけれど、先述の婦人科医に会って、今に至る。

これを読んで興味がわいたら、改めて自分の医療体制の見直しをお勧めしたい。
かかりつけ医がいることは、何かと便利で心強いことだから。