「世の中の防災意識は高まっていますが、備品のほかに、気持ちの準備も大切なのですね」(紺野さん)

恐怖を感じるレベルの大雨が増えている

紺野 自然災害は地震だけではないですね。今年も5月に季節外れのゲリラ豪雨がありましたが、降り方がもう昔と違う。恐怖を感じるレベルでした。 

矢守 過去、1時間に数十mm程度しか降らなかった場所で数百mmという天の底が抜けたような雨が降ったり、入道雲が数十~数百kmにわたって線状に連なる線状降水帯の下では、大量の雨が長時間降り続く。想定外の雨量が大きな被害をもたらします。

紺野 最近の大雨被害は、日本各地で起きていますね。

矢守 その典型的な例としては、2018年7月に岡山県などを中心に被害が出た「西日本豪雨」。倉敷市真備町では51人の方が亡くなりました。

もともと岡山県は「晴れの国」と言われるほど雨が少ない地域。それまで経験したことのない大雨に見舞われました。豪雨に慣れておらず、備えがない地域にも浸水や土砂災害などが発生する恐れがある。「想定外」は起こりえます。

紺野 都会や近郊では相変わらずの建設ラッシュで、あちこちに新築のビルが建てられていますが大丈夫なのでしょうか。

矢守 最近まで海や田んぼだった場所を埋め立てて開発している場所ですね。よく「水は覚えている」という言い方をするのですが、人間が少々手間をかけて堤防や防波堤を作ったり埋め立てたりしても、水はやっぱり昔のことを覚えているんです。

紺野 水は覚えている──。なんだか怖い言葉。

矢守 川や田んぼだった場所に水は行きやすいし、海だった場所には高潮や津波といった形で水が戻りやすい。そういった土地では、いっそうの注意と備えが必要でしょう。