最初は、一般的な目にはわかりにくい写真かなと思っていましたが、徐々に多くの人が武田花の写真に魅力を感じるようになった。90年には『眠そうな町』で、写真界の芥川賞とも言われる木村伊兵衛賞を受賞しました。
花さんの写真がそういう認められ方をしたことをちょっと意外に感じましたが、本当によかったなと思いました。
そのうち花さんはエッセイも書くようになっていきます。百合子さんのように160kmのズバーンとした速球ではなく、ゆるくて回転していないナックルボールみたいな感じというか。
それは、花さんの生き方にも通じるんじゃないか。そんなふうに、じわ~っとした存在感があることを、百合子さんはある時期から理解していたのではないか。
ちょっぴり困った娘だと思っていたわが子のなかに、やっぱり見るべきものがあったと確信した時があるような気がしますね。
その頃から、母子の距離が近づいていったんでしょうね。武田山荘で、二人で過ごす時間も増えていったと聞いています。