『猫光線』
根強いファンの多い花さんのフォトエッセイ集『猫光線』(中央公論新社)

唯一無比の表現者

よく、少し人慣れした野良猫が、あちらの家でもこちらの家でも、なんとなくそこが居場所みたいな感じでしばらくいついたりしますよね。花さんもそういうところがあったのか、ある時期から、男性の家で過ごしたりするようになった。

ある年の元日、泰淳さん亡き後、たぶん百合子さんは一人で寂しい思いをしているに違いないと思って、「うちでお正月やりませんか?」と声をかけたことが2~3回あります。

当時、わが家は半分壊れかけみたいなボロ家で、隙間風がビュービュー入ってくる。百合子さんは毛皮のコートを着たまま炬燵に入り、おせち料理をつまんだりしていました。

好きな音楽は、遠藤賢司やブルースバンドの憂歌団。ジャズは、ジミー・スコット以外は受けつけないと花さんは言っている。

ジミー・スコットはしわがれ声を絞り出して、おじいさんだかおばあさんだかわからないような声を出す特異なシンガーです。花さんとジャズはそれほど結びつかないけれど、ジミー・スコットならわかる気がします。