「ちょっとチクッとしますよー」

血液検査をするとき、看護師さんはいつも優しく声をかけてくださる。チクッとするのか? どれぐらいチクッとくるんだ? 腕から目をそらし、その瞬間を待っていると、

「はい。終わりました」

なんだ、ぜんぜん痛くなかったぞ。

「お上手ですねえ」

私は晴れ晴れしい顔で看護師さんに礼を言い、止めていた息を大きく吐く。いつもそうだ。ぜんぜん痛くない。わかっているくせに、「ちょっとチクッとしますよー」と言われるや、たちまち身体中が硬直する。