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完璧主義で何事にも熱心な人ほど、高いハードルを自分に課して追い込まれてしまうもの。誰にも言えない苦しみを抱えた妻が救いを求めた先は──

多少の苦労は覚悟していたけれど…

20歳で結婚し、18年後に離婚。その間、つらい日々を送ったのは、愛知県に住む西村さん(63歳・仮名)だ。

「元夫は、地方の地主の家に生まれ、本家の次男。私は、お酒を飲んではトラブルを起こす父親のもと、貧しい家庭で育ちました。彼は飲まない人だったので、信頼して交際を始めたのです。『家柄の違い』のため向こうの家族の猛反対に遭ったのですが、彼が家族を説得して、やっと結婚にこぎつけました」

しかし結婚してからも、婚家の人々から「うちの家系には不釣り合いな嫁」と、ことあるごとに罵られる。なかでも、長男の嫁はきつい人だった。西村さんが「いただきものですがどうぞ」と食品を差し出しても、「これ嫌いなの」と突っ返す。

結婚前は優しく見えた夫は、何事も自分の思い通りにならないと不機嫌になり、義母や義姉とうまくいかない西村さんをフォローしてくれたことは一度もなかった。

「育った環境も違うし、反対もされていたので、多少の苦労は覚悟していました。父と比べれば、夫はお酒を飲まないだけでもマシ。2人の娘にも恵まれたので、私が我慢して、もっときちんと務めを果たせばいいのだ、と思っていました」

しかし、夫の気に入るようにと料理や家事の仕方を工夫しても、常にダメ出しの嵐だった。それでも夫や婚家の人々に認められたくて、「はい。すみません。ありがとうございます」と頭を下げてばかりいたと言う。

「口答えや夫婦ゲンカなど、とてもできる間柄ではありませんでした」

18年間、我慢に我慢を重ね、努力してきた。そんな西村さんがどうしても耐えられなかったのが、夫との夜の生活。そんな気にはなれず、なんとか努めようとしても体が開かなかった。夫は獣のように襲ってきて、拒絶すると、真夜中の暗闇に立って西村さんを見つめていたことも。お風呂上がりの西村さんの前に犬を連れてきて、「こいつを襲え」とけしかけたこともあった。

「怖かったですよ。殺されるんじゃないかと思うこともありました。だんだんエスカレートしていく夜の行動を、中学生と高校生になった娘たちに知られてはまずい。夫が異常なのか、応えられない私が悪いのか。1年以上悩んで離婚を決めました」