「自分たちのため」だけの目標から

当時のなでしこジャパンを率いていた佐々木則夫監督は、準々決勝のドイツ戦、そして決勝のアメリカ戦を前に、選手たちにある「映像」を見せました。

そのときのエピソードを、次のように回想しています。

「ドイツ戦の前に見せたのが『われわれは日本を代表している』という映像でした。何のために、この大会を戦っているのか。それは震災で打ちひしがれた人たちに、われわれが一生懸命ひたむきにプレーする姿を見ていただいて、何とか元気になってもらうためだよね? そのことを、映像を使って再確認することができました。

決勝の米国戦では『次のステージに向けて』――つまり復興ですよね。ドイツには勝ったけれど、そこで収まらずに新しいステージに向かっていこう、というメッセージを込めました」

(宇都宮徹壱「2011年の東日本大震災となでしこジャパン  佐々木前監督が語る『あの時考えたこと』」Sportsnavi /2019年3月11日)

これが「誰かのために」です。

当初、なでしこジャパンが掲げていた目標は「ベスト4以上に入ってメダルをとる」、そして「一度も勝っていないアメリカに勝つ」ことでした。

これらは自分たちがワクワクすること、つまり「自分たちのため」だけの目標でした。

そこに「被災地の方たちを元気づける」という「誰かのために」の要素が加わったことで、なでしこジャパンは次々と強豪国に勝ち、決勝ではアメリカと対戦。

PK戦までもつれた激闘を制し、優勝の快挙を成し遂げたのです。

※本稿は、『強いチームはなぜ「明るい」のか』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

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