平安へのタイムスリップ

ここでも藤壺を象徴する藤のある庭に紫雲文様の几帳、御簾の野筋など藤色(紫)をキーカラーにして装飾を施した。
まひろは『源氏物語』の執筆のために、藤原道長から特別に個室を与えられた。

見逃せないのが、まひろが道長から贈られた檜扇(ひおうぎ)である。有職彩色絵師の林美木子氏が、まひろと三郎(後の道長)の子供の頃の初めての出会いを檜扇に描いている。「国宝級」と思い、美術スタッフは手袋をはめて大切にあつかっているという。

まひろの扇
道長がまひろに褒美にと送った扇には特別な思いが・・・

まひろは『竹取物語』が好きで、娘の賢子(かたこ)にも読んで聞かせている。そのため物語を書く筆記具にもこだわった。三日月の硯、竹文様の水差し、牛車の筆置き、兎の文鎮など、竹取物語を連想させている。

筆記道具
竹取物語を連想させる筆記道具

このドラマには月が多く登場する。まひろが一人で眺め、道長も一人で眺め、一緒に眺めるシーンもある。その月にもこだわり、空気の澄んだ北海道で撮影した月を登場させている。私は北海道に行ったことがないので、月が出るとありがたく拝見している。

美術チームのこだわりが満載の『光る君へ』は、令和に生きる私たちを、平安の世界にタイムスリップさせてくれる。