藤壺方向
長く裾を引いた衣装も美しい

『松藤』は「藤壺」のシンボルツリー

ドラマの中にたびたび登場し、ゆっくり見たいと思ってしまうのが、中宮彰子の住まいである「藤壺」だ。藤壺は火災にあい消滅し、ドラマでは新しい藤壺が登場している。藤原道長と嫡妻の倫子(黒木華)が、愛する娘のために、そして一条天皇(塩野瑛久)を迎い入れるために、贅の限りをつくして作り上げた館である。

「平安時代は庭に梨の木があれば『梨壺』、藤があれば『藤壺』と呼ばれていたそうです。当時は藤棚がなく、時代考証の先生にお聞きしたり、絵巻物を見たりして調べました。松に絡ませて藤を愛でていたとう資料があったのです。藤の花房が庭の砂についてしまうほど垂れ下がる『砂ずりの藤』を松に絡ませて飾りました。『松藤』は、この館のシンボルツリーです」 (NHK 映像デザイン部・山内浩幹チーフデザイナー) 。

「松藤」は館の左右に植えられている。土御門殿にも「松藤」はあるが、中宮の館の庭にふさわしい豪華なデザインにした。一条天皇の訪れを待つのに、ふさわしい庭の景観だ。

室内で最大に豪華なのは、当代一流の公卿たちが彰子の入内を支持して寿いだ和歌の色紙を貼った屏風。道長の権力を象徴するもので、居室の中心に位置している。絵はこのドラマで衣装デザインを担当している日本画家の諌山恵美氏が、このドラマのためだけに描いた。

「藤は『藤原』の象徴としています。藤壺では藤色である紫を差し色に入れることを考えました」 (NHK アート・枝茂川泰生デザイナー) 。
室内は、御簾の紫野筋、紫雲文様の几帳など、紫をキーカラーにした装飾にしている。
螺鈿や蒔絵を施した唐櫃をはじめ高燈台、釣香炉、朱塗棚、季節の花を挿した角盥(つのだらい)など、どれも贅沢な柄の調度品だ。

紫雲几帳
紫雲几帳