商品科学研究所の活動

商品科学研究所は、1973年10月に西武流通グループの「企業利益の社会的還元」の一つとして、堤清二の肝いりで設立された(由井編1991a)。

経費は西友ストアーと西武百貨店で負担するが、独立の研究機関として自主的な運営を任された。

初代所長には、三枝佐枝子(1920~2023)が就いた。三枝は『婦人公論』初の女性編集長を務めた人物として知られ、1968年に退職していたが、堤清二に請われて商品科学研究所の初代所長となり、その活動に注力していく。

理事には、社会学者の加藤秀俊(1930~2023)や、女優の高峰秀子(1924~2010)ら各界の有識者と、堤ら西武関係者が名を連ねた。

商品科学研究所の活動の柱は、テストキッチン・コアを中心とした商品テストと調査研究にあった。

テストキッチン・コアとは、「家庭の主婦が年会費を払い、商品の勉強会に出席したり商品テストのモニターに参加するというユニークな組織」とそのための施設のことで、スウェーデン生協によるテストキッチンをモデルとして、実際に家庭で使う状態でテストする方式をベースとした(『Two Way』1998年4月)。

コアでの既存商品の比較研究をもとに、商品の改善や新商品の開発につながることも多かった。

『消費者と日本経済の歴史 高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(著:満薗 勇/中央公論新社)