事件の背景に「神戸方式」人事

それにしてもなぜAさんに矛先が向けられたのか。会見で筆者はこの点を何度も仁王校長に尋ねたが、要領を得なかった。同校長は「(Aさんは)当初、女性教員を慕っていたが、ある時Aさんに関するプライベートなことを女性教員が周囲に喋ったことで疎遠になった」と明かした。

とはいえ、それが標的にされた理由かどうかは不明だ。代理人弁護士も、「なぜ自分だけがそんなに攻撃されるのかとAさんは大変悩んでいます」と打ち明ける。

市教委の高西宏和教職員服務担当課長は、「被害教員は3人の男性教員とも仲が良く、自宅に招かれたり遊びに行ったりしていた。その関係性がどこでおかしくなったのか」と首を傾げる。

Aさんは現在の心情をしたためた書面を代理人に託していた。保護者らヘは「『3年目も先生でうれしいよ』こんな声をかけてくださった方もいて僕の支えとなる言葉です」と感謝した。

生徒たちにも称賛と感謝を表した後、「先生はよく『いじめられたら誰かに相談しなさい』と言っていましたね。しかし、その先生が助けを求められずに、最後は体調まで崩してしまいました。ごめんなさい」と謝っている。

17年4月、「夢にまで見た」教員になり3年生、4年生、5年生と持ち上がっただけに、Aさんの児童たちへの思いは人一倍だ。書面は代理人弁護士の判断でメディアに公開された。

学校の不祥事では多くの場合、教育委員会の隠蔽指示が見受けられるが、このケースは現校長、前校長ら現場サイドの「握りつぶし」の疑いが濃厚だ。

さらに、事件の背景には「神戸方式」という独自の制度がある。問題の女性教員は、先代の男性校長が招聘していた。教員の異動は通常、教育委員会が決めるが、神戸市では校長同士の話し合いで教員を異動させることができる。(教育委員会は追認)

さらに前校長は女性教員を、周囲から「男女関係」を噂されるほどに重用していた。一方でAさんには、「いじめられてないな」と圧力をかけていたと見られる。