会では、毎回とくにテーマは設けないが、大海さんが入手した情報の共有から始まるのが常だ。この日は防災の話からスタートした。

「家具の転倒を防ぐ突っ張り棒は、区に申請すると2万円まで補助される」というお得な情報に、参加者から歓声があがる。

この日一番の盛り上がりを見せたのは、特殊詐欺対策の話題。大海さんが「詐欺電話の防犯装置は無料で借りられます。警察が設置してくれることになっているから利用してね」と言うや否や、あちこちから詐欺電話を受けた経験談が飛び出す。

「息子が痴漢したから示談金を出せって。『息子、隣にいます』と言ってやった」などの武勇伝に大爆笑だ。

話のネタは芸能から政治まで次々と移り変わる。締めに童謡を5曲合唱。あっという間に1時間が過ぎた。

最後に、参加者に話を聞いてみた。「夫を亡くし寂しくてたまらなかった時期、砧むらの仲間がいたから私はひとりにならなかった。もし、この場所がなかったらと想像すると怖い」とIさん(89歳)。ひとり暮らしのOさん(80歳)は、「とくに仲良くなった3人で、毎朝LINEで安否確認をするの。孤独死はまぬがれそう」と微笑んだ。

「砧むらおばちゃん会議」では、おひとり様になる可能性を見据えて暮らしや医療ケアについて語り合う「おひとり様研究会」(NPO「煌めく返り花」との共催)や、ダンススタジオで行う体操教室なども定期的に催している。

また、行政の福祉関係者と一緒に、砧に住む高齢者が困っていることなどを話し合う会も月に1、2回開いているという。「困りごとを話し合いながら助け合う、こうした繋がれる場が、年を重ねるごとにますます重要だと実感します。そうそう!旅行したくても年寄りだけでは危なっかしいから、60代をスカウトしてメンバーにしようと企んでいるんですよ(笑)」と、大海さんは目を輝かせた。

 


【ルポ】いざという時に助け合える ゆるく繫がる地域の《居場所》
(1)<石川県輪島市「かあちゃん弁当」>励まし合う憩いの場
(2)<東京都世田谷区「砧むらおばちゃん会議」>安心感を近所で共有
(3)<大阪府堺市「グループ・スコーレ」>必ず誰かが世話を焼く
(4)<兵庫県豊岡市「だいかい文庫」>人との出会いは繋がりの貯金