葬儀の模様を動画配信

私は友人にぜひ来てほしいと言われ、一度もお会いしたことのない父親の一日葬に出席したことがある。一日葬は通夜がなく、普通は読経、祭壇の前でお焼香、故人とのお別れ、火葬場、精進落とし(食事で宗派によって言い方は異なる)となる。

火葬場に隣接した葬儀場だったが、僧侶を呼ばず、お焼香をした後に、父親が趣味で作った陶器がいくつか置いてあったのを眺めて、お清めの塩をいだだき、火葬場にいく親族以外は帰された。その後、友人から動画が送られてきた。約30人の参列者のお焼香を後ろから撮影したもので、一人スタイルの悪い女性が登場し、私だったのがっかりした。

(写真:stock.adobe.com)

親しい人の葬儀に参列できなかった場合、動画で葬儀の模様が送られてくるのは良いが、私は参列したので必要がなかった。

コロナ禍から直葬(葬儀はせずに火葬にする)も珍しいことではなくなった。

私の父は、「葬儀無用、戒名無用、僧侶を呼ぶな」と言っていたので、平成10年に亡くなった時は直葬で、母と兄と私と葬儀社の社長だけで見送った。なぜ葬儀社の社長と書いたかというと、骨を箸で拾う時は二人1組でするが、母と兄が拾った後、私は一人だったので社長と拾ったからだ。当時は直葬という言葉も知らない人がいて、親戚以外にもいろいろ説明しなくてはならなかった。母も兄も直葬にしてくれと言われていのでそうした。

私は家族がいないから、希望しなくても直葬だろう。

しかし、私は死んでからが忙しいのだ。

年齢を重ねたら、悪い人と思っていた人が結果的に良い人だったり、その逆だつたりが分かってきた。もしあの世というものがあり、そこに誤解していた人がいたら謝りたい。

そして、父に「生きている時に都合の悪いことは整理して、日記は捨てておけ」と言いたい。私は今頃、父の嘘だらけの人生を知り、父の写真に手をあわせるのも嫌になっているのだ。

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