辛うじて残る『特別な私』が消えぬうちに

寅子がその手帳を開くと「美雪 愛してあげられなくてごめんね」との言葉が。

さらにページをめくると、20年近く前、新潟にいたころの美佐江が<特別な相手>に渡していた手首に巻く赤い飾り(ミサンガ)が挟まれていました。

そして、そのページには

「私はたしかに特別だった。私が望めば全てが手に入った。全てが思い通りになった。盗みも、体を売らせることもできた。けどこの東京で、私はただの女にすぎず、掌で転がすはずが知らぬ間に転がされていた。次々に沸く予期せぬことに翻弄された。身籠れば、特別な何かになれるかと期待したが無駄だった。私の中に辛うじて残る『特別な私』が消えぬうちに消えるしかない」

などと、新潟で当時頻発していた犯罪の裏に美佐江がいたが、東京では特別な存在ではいられなかった、という告白が記されていました。