検査は「地図」を作る作業

こうした悩みを抱えていたところ、20年ほど前に『片づけられない女たち』という本に出合い、自分は発達障害の一種「ADHD(注意欠如多動症)」ではないかと思い至って。ですが、専門外来を探して数ヵ月先の予約を取り、診察を受けに行くことは私にとってとてもハードルが高く、長らく受診しないままでした。

ADHDの症状として「多動」というのがありますが、私は頭のなかが常に多動。すぐに疲れてしまうので、一日にできることが限られています。

やっと受診できたのはコロナ禍がきっかけでした。人と会う用事が減って時間があったので思い切って診断を受けることに。内臓疾患のように「この数値が高いのでこの病気」とすぐに診断がつくものではありません。そもそも診断基準も年々変わっていきます。

詳細な検査の結果、私はADHDだとわかりましたが、大事なのは「診断が下りたこと」ではありません。ADHDのなかでも、自分にはどういう傾向があるのか、具体的にわかったことに意味がありました。

検査は、いわば「地図」を作る作業。自分の特性を把握したことで、「脳内に入る情報量が多すぎて疲れるので、インテリアや持ち物の色も減らしたほうがいい」というように、対処法を考えられるようになります。

この経験が興味深く、当事者として本に書いてみようと思ったのです。