〈神奈川より〉

急速に開発された街のもろさ
(取材・文◎丸山あかね)

台風19号は首都圏でも牙をむいた。私の暮らす神奈川県川崎市の武蔵小杉では12日の19時あたりから暴風雨が強まりはじめ、23時20分頃に周辺一帯が停電。

パソコンに向かって原稿を書いていた私は「嘘でしょ」と悲鳴を上げ、そのときになって初めて事の重大さに気づいたという体たらく。大きな影響はないだろうと高をくくっていた自分が恥ずかしい。

すぐにスマホを手に取りSNSで情報を収集しようとしたが、「つながりにくい状態になっている」というメッセージが表示され、愕然とした。あとでわかったことだが、マンションで一括契約しているネット回線の大本が不具合を起こしていたのだ。

すっかり途方に暮れていたところ、リビングから「チチチ」という聞き覚えのない微音がする。固定電話だと気づいて受話器を耳にあててみたら、横浜の日吉に住む妹の「大丈夫?」という声がした。無用の長物と化していた固定電話に救われたわけで、アナログを侮ってはいけないと痛感した次第。テレビもネットも使えず、妹からの電話が唯一の情報源だ。

妹からの第一報は「武蔵小杉が大変なことになっている。JRの駅前ロータリーが水深1メートルだって!」 という衝撃的なものだった。ほどなくして「下水道の逆流が原因らしい」という第二報を受け、急速に開発された街のもろさが露呈したのだと理解した。

武蔵小杉駅周辺にはこの12年間にタワーマンションが14棟も新築された。40階超のマンションには約600世帯が暮らすという。富士通やNECなどのオフィスビルも林立し、大型商業施設も次々に完成。人口の急増ぶりは半端ではない。

人気の理由は東急東横線・目黒線、JR南武線・湘南新宿ライン、横須賀線が乗り入れるというアクセスのよさにあるのだが、その半面、朝の通勤ラッシュが凄まじく、以前からインフラ整備が追いついていないと問題視されていた。