避難所で思わず「悔しいねぇ……」

夜、従姉は避難所へ。私と息子は、水道は使えるものの停電中の従姉宅の2階に泊まる。自宅から持参した懐中電灯の明かりを頼りに栄養食品を食べ、汗拭きシートで身体を拭き、寝袋で眠った。

翌日、作業の前に避難所へ足を運んでみた。暖房器具ひとつない冷え切った空間。段ボールの上で膝を抱える従姉と周囲の人たちが語り合いながら泣いている。聞けば、ある政治家が「今回の台風はまずまずに収まった」と発言したというニュースをインターネットで知ったそうだ。

「心がなさすぎて悲しい。お偉いさんはいつだってそうだ」と絞り出すように言うと、こう何度も繰り返した。「悔しいねぇ、本当に悔しい……」。

3日目。まだ半分も片付いていないというのに、仕事の都合上、手伝えず帰路につく。「AIがもてはやされている時代だけど、結局、被災直後に役立つのは人間の腕力とハートだけなんだなぁ」と息子がポツリ。

慣れない重労働で身体中が痛い。けれど、被災者の心のほうが何倍も痛いはずだ。今後何ができるだろう? 東京へ向かう新幹線の中、私と息子の会話はただそれだけだった。