どうせ働くなら楽しく、だれかの楽しみのために
『ピエタ』の舞台化は、きっといつかできるだろうと信じていました。だからなかなか辿り着けなくても、ネガティブな気持ちにはなりませんでした。そしてようやく今年の夏、実現することに。
結果論ですが、今がベストタイミングだと思います。以前は流して読んでいたところが、しっかりと目に入ってきましたし。作品自体が、時期を選んでくれたのではないか、という気さえします。
高級娼婦のクラウディアが、「ヴェネツィアの貴族は政治をしなくなり、お金儲けばかり考える商人になってしまった」と嘆くくだりがあります。「それ、まさに今、起きていることと地続きじゃん」と(笑)。ペヤンヌさんとは「今と繋げたい」とずっと話していたけれど、3年前とはまた違う解釈が生まれている実感があります。
私が演じるのはエミーリア。書評を書いた頃はクラウディアを演じてみたいと思っていましたが、どの役が自分にふさわしいかをよく考えたら、事務方を務める彼女でした。私が『ピエタ』舞台化のためにくねくね歩いてきた道と、エミーリアが歩く道が似ている気がしたんです。
根が受け身という点も、共通していると思いました。私って、自分がやりたくてやっていると思われがちだけど、実はけっこう受動的。基本は、猫と一緒にソファに寝転がって、映画やドラマを観てダラダラ過ごしたい人間です。ただ、どうせ働くなら楽しくやりたいし、誰かが楽しんでくれることのために力を注ぎたいんです。