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新型コロナウイルスの感染が拡大し、危機的な状況が続いています。しかし日本では「緊急事態宣言」発令の遅れや自粛要請にともなう補償をめぐり、国民の不満は高まるばかり。そんな中、衆議院議員・石破茂さんの発言に注目が集まっています。与党議員でありながら政権批判を続けるのはなぜなのか。また普段、国民からの声をどのように集めているのか、ジャーナリストの中村竜太郎さんが斬り込みます。(構成=中村竜太郎 撮影=本社写真部)
民主主義はプロセスが大事
中村 安倍総理が緊急事態宣言を出して、国民へ外出自粛を呼びかけていますが、状況は日々、深刻さを増しています。私たちは我慢をしつつ大きな不安を抱える毎日なのに、政府が最初に行った施策は、466億円を使って「1世帯に布マスク2枚」。生活に余裕のない個人や企業がいつ潰れるかもしれないのに、経済補償は後手に回っていて、政権への不満は強まるばかりです。
石破 政府は感染拡大を阻止するために真摯に取り組んでいますが、それが不十分かもしれませんし、批判があるのもまた事実です。特に、誰が何に困っているか、何に怒り、何に悲しんでいるかという想像力が政権に欠けていると思われています。新型コロナに関連して、世の中の人がどんな思いでこの苦しい状況を闘っているか、それを肌で感じて迅速に対応しなければ期待は失望に変わってしまいます。
大恐慌以来とされる国難ですから、問題は山ほどありますし、いろんな意見や考えも調整しながら進めていかねばならず、すべてがうまくいくとは現実的には考えられません。ですが、世の中の人が求めているのは、正確な情報を知って、不安を払拭したいということだと思います。
中村 どんなプロセスで対応を決定しているかが、まずわかりませんよね。
石破 私は、民主主義はプロセスが大事だと思っています。形式的ではなくて、どれだけ多くの人の意見を反映し、そしてどれだけ少数に配慮するか。反対意見の人に対しても、ある程度納得してくれるように話し合わなくてはならない。政府の説明が世間の人に伝わらないということは、おおいに反省すべき点ですね。
中村 海外で感染者が急増し社会機能が停止している前例を見ていながら、それを活かしきれず、非常事態宣言が遅かったという批判もあります。
石破 日本での非常事態宣言というのは、いきなり戒厳令が敷かれて、警察の方が検問したりするわけじゃない。知事が権限行使できるということですから、もっと早くてもよかった。じゃあ、いつかというと、東京で初めて死者が報告された2月26日、あるいは東京で感染経路が不明な感染者が出た3月半ば。ここできちんとした説明をし、理解を求めればもっと良かったかもしれない。
中村 人的接触を8割減らせば感染増加を抑えられると言われているのに、遅きに失した感があります。
石破 やはり、アベノミクスで成功したということ、オリンピック・パラリンピックの開催、習近平国家主席の国賓来日、という予定の中で、もちろんアベノミクスが失敗したとは言われたくない、オリパラや習主席来日はできれば予定通りに、という思いは政権のどこかにあったでしょう。それで非常事態宣言が遅れたとは私は思いませんが。
中村 政府の対応の遅さを目の当たりにするといろいろ勘ぐってしまいます。例のマスクにしろ、生活者との感覚のズレは、いかんともしがたい。