(イラスト:すぎやままり)
10月20日は「床ずれ予防の日」。ピンピンコロリが理想でも、なかなかそうはいかないもの。「理想の最期」を迎えるには何が必要か?かなまち慈優クリニック院長の高山哲朗先生の記事を再配信します。

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病院で最期を迎えたいのか、家で静かに逝きたいのか。また、意識がなくなった時に延命をするのか─。自分も家族も戸惑わないために、「終末期医療」の準備をしておくことが大切です(構成=古川美穂 イラスト=すぎやままり)

ほとんどの人が最期は医療が必要に

私は長年、緩和治療や在宅医療に携わり、多くの方の死と向き合ってきました。どんなに健康に気を使っていても、すべての人は人生の終末である死を避けて通ることができません。

厚生労働省が発表した「令和2年(2020)人口動態統計」の「性別にみた死因順位」によると、日本人の死因は多い順に、がん(27.6%)、心疾患(15.0%)、老衰(9.6%)、脳血管疾患(7.5%)。肺炎(5.7%)と続きます。この調査からもわかるとおり、心疾患や脳血管疾患などで突然死に至るケースはあっても、多くの高齢者が病気や老衰、障がいの進行を抱えたまま、寿命を迎えるまで生活しているのが現状です。

このように回復の見込みがなく、余命が限られているとわかった時点から受ける医療のことを「終末期医療」といいます。延命治療の有無など、本人の意思や尊厳を尊重しながら行われるのが特徴。最期の時まで心穏やかに過ごすことを目指し、身体的、精神的な苦痛を取り除く処置が施されるものです。

「治療は病院で受けるもの」と思い込んでいる人が多いようですが、そんなことはありません。終末期医療は、「医療機関」「高齢者施設」「自宅」のどこで受けるかを選ぶことができます。

私が患者さんと接するなかで感じるのは、「家族に迷惑をかけたくない」「自宅で最期を迎えたい」と考えていても、そのための準備をしたり、家族や周りの人に希望を伝えている人はまだまだ少ないということ。

比較的緩やかに進行することが多いがんの場合には、病状が判明した後でも終末期の過ごし方を考える時間がもてるかもしれません。けれど、心臓や脳血管の病気で突然意識を失ったり、認知症のように、気づいたら自分で判断できない状態になったりすることもある。そうなると、家族につらい選択を強いるだけでなく、本人にとって望まない治療が施されることになりかねません。

だからこそ元気なうちに、終末期医療に望むことを明確にしておいてほしいのです。