「夫を見送ってからも、なるべく考え込む時間を作らないようにしていましたね。考えすぎるとダメになりそうだと思ったからです」

予定を入れて考え込まないように

闘病中はちょうど新型コロナ感染症が拡大していた時期だったこともあり、抗がん剤治療で入院中も、面会に行くことができません。一人で悶々としているのはつらかったので、仕事の依頼は断らず、それ以外の予定もできるだけ入れて忙しく過ごしました。

夫を見送ってからも、なるべく考え込む時間を作らないようにしていましたね。考えすぎるとダメになりそうだと思ったからです。心配した友人たちが「食事に行かない?」と誘ってくれれば、喜んで出かけました。

そんな時、夫を知る方から、私の知らない彼のエピソードを聞くことがあって。映画への熱い思いも、お酒の席でのやんちゃな顔も、知ることができてよかったと思います。

犬のぱるると3匹の猫の存在も救いになりました。毎朝、ぱるるの散歩に行くので、家に引きこもってはいられません。ご近所には「犬友だち」が20人ほどいて、「おはようございます」「今日はいい天気ですね」など、さりげない会話をするのが気分転換になります。

時には、ご自宅に招かれてお茶をご馳走していただくことも。あるおじさんは、なぜかいつもお菓子をくださるんですよ(笑)。そんな、なんてことのない日常が喪失感を埋める助けになるのですね。