東京高裁の決定(要約)
(1)犯行時の着衣の血痕の色調変化に関する弁護側の実験や鑑定書は信用できる
(2)弁護側の衣類の味噌漬け実験の結果は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に該当し、袴田巖元被告を犯人とした確定判決に合理的な疑いが生じる
(3)犯行時の着衣は捜査機関が事実上、捏造した可能性が極めて高い
(4)再審開始として死刑と拘置の執行を停止した静岡地裁決定を支持する
「市民の会」(楳田民夫代表)の山崎俊樹事務局長が血痕の色の変化を確かめるために20年かけて実施してきた「味噌漬け実験」が司法の場で評価された。
これだけ重要な裁判で一市民の実験を裁判所が評価するのは異例だ。
山崎氏は「素人の実験を認めてくださりありがたい。味噌に漬けた血痕がどうなるかという研究などをした専門家はいないので、私たちの実験が唯一無二だったからでしょう」と謙遜した。
検察側も味噌漬け実験の写真は、白熱灯で照らして撮影したため赤みが残って見えた。しかし、大善裁判長が静岡地検に行き、実験を直接確かめた。
間光洋弁護士は「裁判官が直接見てくれなかったら検察写真でごまかされたかもしれない」と振り返る。
書面審理、法廷審理に追われる中、現場に出向く裁判官は稀有だ。とはいえ、9年前の再審開始決定と比べると、「最高裁の前例に抗って」の決定ではない。その意味ではハードルは村山決定より低かったかもしれない。