再び見せた涙

翌日、ひで子さんは参議院議員会館で開かれた弁護団の報告集会に参加した。「袴田巖死刑囚救援議員連盟」の塩谷立会長はじめ、鈴木宗男さんと娘の貴子さん、福島みずほさんら国会議員らが次々と挨拶した。

ひで子さんは

「巖にはまだ決定のことは言ってません。『再審開始になったよ』と言ってもわからないでしょうから、『すごくいいことがあったよ』と伝えます。本当にありがとうございました」

と再び声を詰まらせた。

えん罪被害者や支援者らも続々と発言した。「布川事件」の桜井昌司さんは

「本当によかった。(ひで子さんを)よく見たら泣いているんですよね。でも私は腹が立っている。なんでこんなに長いんですか。再審開始のハードルを下げるとかいうことを検察が言っているとか聞きますが、そんなことは検察が決めることではなく国民が決めること。あの人たちが司法を動かしているように言うのは大間違い。常識があれば真空パックなどにしますか」

と憤った。桜井昌司さんはこの5か月後の8月に亡くなった。享年76歳。

大阪市東住吉区の女児焼死事件の青木惠子さんは「私は2014年に獄中(のテレビ)で巖さんの釈放を見ました。無期懲役の私には死刑囚の袴田さんの辛さはわからないけど、私も(無罪の決め手は)再現実験でした。仲間が勝つことは本当に嬉しい」などと語った。

『それでもボクはやってない』 (2007年)の映画監督の周防正行さんも登場。

「袴田事件は、そもそも捜査に著しく違法性があり、取調べでの違法性は明らか。(現在でも、取調べの)録音・録画は裁判員裁判や検察の独自捜査などに対象が限定されている。録音・録画を行っても違法な取調べが何件もあり、弁護士の立会いの法制化など見直しを進めるべき」と話した。