どういうわけだか僕が演じるのは、コミュニケーションが苦手だったり、気弱なオタク系だったり、優柔不断で巻き込まれ型の人間が多い。恋愛経験ゼロ、ゆえに童貞みたいな(笑)。ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の津崎平匡もそうでした。『引っ越し大名!』でも、僕が演じる主人公の片桐春之介は「引きこもり侍」。いたんですね、江戸時代にも。(笑)

物語の冒頭、姫路藩の書庫番を務める春之介が、周囲の人たちから「かたつむり」と揶揄されながらも書庫に閉じこもって読書三昧の日々を送っているシーンが描かれます。ところが、藩主の松平直矩が、姫路(兵庫)から日田(大分)への国替えを幕府によって言い渡され、なぜか春之介が1万人の大移動の指揮をとる“引っ越し奉行”に任命されてしまい……。

時代劇ですが、春之介は現代的なキャラクターですし、彼が見舞われる試練も、今で言うところの理不尽な人事異動や上司によるパワハラを思わせるところがあって、自然と春之介の心の動きが理解できました。

引きこもる人は、心の裡(うち)に煮えたぎるマグマを溜め込んでいる、と僕は常々思っています。たとえば、アイドルのコンサートなどで爆発的なパワーを炸裂させながらオタ芸を披露する人もそう。

実は僕自身、引っ込み思案で、そのくせ部屋で一人の時は歌ったり踊ったりするような子どもでした。でも、学校で「演劇やってみない?」「一緒に音楽やろうよ」と誘われたのを機に、自分の中で沸々とたぎっていたエネルギーを内側から外側へ放出させることができるようになった。

春之介も、引っ越し奉行を断れば切腹だと追い詰められて仕方なく前へ押し出されるのですが、結果、人と接することを覚え、手を差し伸べてくれる人の温かさに触れ、大切なことを学んでいきます。

高橋一生さん、高畑充希さんをはじめとするすばらしい共演者に恵まれ、力をあわせて完成度の高い作品を作ることができました。睡眠時間を削って日夜撮影という過酷な現場でしたが、とてつもなく幸せだったんです。待ち時間に共演者の方々やスタッフのみなさんと、他愛のない話で盛り上がったのもメチャクチャ楽しかったなぁ。