高校の文化祭を機に役者の道へ
役者という仕事については、子どもの頃から、父が所属していた文学座の舞台を母と観に行っていたので、知ってはいました。
これは後から聞いた話ですが、舞台で親父が女性にキスをしているのを観た僕が、「やめろーっ!」と叫んだことがあったらしいんです(笑)。『オセロー』というシェイクスピアの四大悲劇の名作で、親父がオセローを演じていて、嫉妬に狂って殺してしまった妻のデズデモーナを抱き上げて接吻するシーンがあったんですね。
僕自身は、小学校2、3年生だったので覚えていないんですけど、劇団内では有名なエピソードとして語り継がれていると、大人になって聞きました。とはいえ、親父が家で仕事の話をすることもなかったので、役者を意識することなく育ったんです。
芝居を面白いと思ったのは高校の文化祭のとき。最初は仕方なくかかわっていたんですけど、「どうせなら面白いものやろうぜ」と、気づいたら自分で脚本、演出、キャスティングまで。さらに、ちょっとおいしい役で出演もして、『仁義なき戦い』のパロディみたいなものを作っていました。
そのときに、「めちゃくちゃ楽しいんだけど!」と思ったんですよね。しかも、文化祭の後にクラスの女子4人から告白されたものだから、「俺、向いているかもしれない」と勘違いしてしまった(笑)。そして、「そういえば、親父ってこういうことをやっていたんだっけ?」と、仕事として役者を意識し始めたんです。