歴史を知るきっかけ
古内 この『台湾漫遊鉄道のふたり』が、まさに自分たちの歴史を学ぶきっかけになりますね。
楊 私は、考えるきっかけを作りたくてこの本を書きましたが、決して、日本人を詰問するつもりはありませんでした。翻訳を読んだ日本人の方がどのような感想を持たれるか、とても気になります。
古内 私自身は、大変勉強になりました。そして、80年代生まれの作家さんがこのような小説を書かれていることは刺激になります。日本人の読者にとっては、台湾の食文化や風俗を知ることができ、さらに、自分たちの間にはこういう歴史があったということを知る、とてもいいきっかけになる本だと思います。
楊 ありがとうございます。
古内 今日はたくさん面白い話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。
日本で美味しいものをたくさん食べて、楽しい思い出を作って帰っていただきたいと思います。
(この対談は台湾文化センターと紀伊國屋書店の共同企画で、2023年5月28日に紀伊國屋書店新宿本店で行われたものです)
『台湾漫遊鉄道のふたり』楊双子著・三浦裕子訳(小社刊)
炒米粉、魯肉飯、冬瓜茶……あなたとなら何十杯でも――。
結婚から逃げる日本人作家・千鶴子と、お仕着せの許婚をもつ台湾人通訳・千鶴。
ふたりは底知れぬ食欲と“秘めた傷”をお供に、昭和十三年、台湾縦貫鉄道の旅に出る。
「私はこの作品を過去の物語ではなく、現在こそ必要な物語として読んだ。
そして、ラストの仕掛けの巧妙さ。ああ、うまい。ただ甘いだけではない、苦みと切なさを伴う、極上の味わいだ。」
古内一絵さん大満足
1938年、五月の台湾。
作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。
現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴とともに、 台湾縦貫鉄道に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。
しかし、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子は焦燥感を募らせる。
国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差―――
あらゆる壁に阻まれ、傷つきながら、ふたりの旅はどこへ行く。