ヒット作『東洋医学はなぜ効くのか』が生まれた背景
――その出口さんが手掛けて、ヒットしたブルーバックスが『東洋医学はなぜ効くのか』。
近年になって「東洋医学」を現代科学で紐解く研究が世界各地で行われるようになりました。その結果、驚くべき事実が次々と明らかになっています。
なぜ手のツボを押すとお腹の調子が良くなるのか? 漢方薬を飲んだらイライラが治まるのはなぜか? こうした鍼や灸、漢方薬にまつわるナゾやメカニズムについて、最新研究を基にまとめたのが、この『東洋医学はなぜ効くのか』です。
著者は、この分野を長く取材されてきたNHKのディレクター・山本高穂さんと、島根大学医学部の大野智先生のお二人です。 現在までに電子版と併せて約5万部・7刷と、有難いことにご好評をいただいています。
この本にはポイントが二つあって、一つ目が東洋医学と西洋医学は対立する概念ではない、というメッセージです。
西洋医学を前提に、東洋医学などを組み合わせて患者の生活の質を向上させるいわゆる「統合医療」という考えがありますが、それについて、あらためて科学的見地から迫っています。まさに大野先生が研究されている分野なんですが、両者のメリットや強みをうまく組み合わせることが出来る、ということなのだと思います。
もう一つが、東洋医学に対する新しい視点を提供したということです。
東洋医学には、たとえば舌で体の不調を診察する舌診(ぜっしん)や、人体の構成要素として「気血水」という概念が使われたりします。こうした考え方を尊重しつつ、現代医学でとらえ直してみると、より理解が深まっていくのだと感じました。
長らく医療分野で記者をやってきた私でも、最初から最後まで知らないことばかりで、編集させていただいた私自身がびっくりした……というその驚きや知的興奮も、読者の方に伝えたいと考えました。