寒い季節はもちろん、一年を通して快適な生活を送るために欠かせない電気。普段当たり前のように使っている電気は、どのようにつくられているのでしょうか。電気を生み出す現場を、タレントの坂下千里子さんが訪れました。
今回訪れた北陸電力・敦賀火力発電所は、電源の多様化の一端を担うべく、石炭のほかバイオマス燃料を取り入れ、クリーンで安定した電力を供給しています
今の時代ならではの
火力発電の役割とは
今回訪問したのは、福井県敦賀市にある北陸電力・敦賀火力発電所です。「発電所を訪れるのは今回が初めて。私たちの暮らしを支える電気がどのようにつくられているのか、お話をうかがうのが楽しみです」と話すのは坂下千里子さん。2024年3月に延伸開業した北陸新幹線の敦賀駅から車で15分ほど行くと、港と発電所が見えてきました。
到着すると、同発電所業務課の小幡さんが発電所の概要について説明してくれました。「この発電所には、出力50万kWの1号機と70万kWの2号機があります。合計120万kWと、福井県内すべての一般家庭でご使用する電気を賄うことができる規模になります」。
敦賀火力発電所は、オーストラリアやインドネシアなどから輸入される石炭を燃料として発電しています。「一度に6万~8万tを積載できる船で、オーストラリアからは約16日かけて運搬。その石炭は、1、2号機がフル稼働すると、1週間ほどで使い切ってしまいます」という説明に、「頻繁に運ばなくてはならないんですね!」と坂下さんもびっくり。寒さが本格化したこの日も、同発電所はフル稼働していました。
現在、多くの原子力発電所が停止していることもあって、日本の電力のおよそ7割は、同発電所のような火力発電(おもな燃料は天然ガス、石炭、石油)によって賄われています。さらに火力発電は、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーが普及していくなか、電力の安定供給を維持していくうえで、重要な役割を担っているそうです。
「電気は大量に貯めておくことができません。また、“使う量”と“つくる量”をつねに一致させておく必要があります。万が一、需要と供給のバランスが崩れると、最悪の場合、停電につながってしまうからです。たとえば、太陽光発電や風力発電は、発電時にCO₂を排出しないというメリットがある一方で、発電量が天候や時間帯に大きく左右されるため、安定した発電が期待できないというデメリットがあります。再生可能エネルギーの普及をさらに進めるためにも、電力の増減に対応して出力を瞬時にコントロールでき、電力の需給バランスを適正に保つ役割を果たす火力発電が今後も欠かせないというわけです」(小幡さん)
坂下さんは「火力発電は、なんとなく昔から日本の電力を支えている発電方法というイメージは持っていましたが、今回、電力の安定供給にさまざまな役割を果たしていることを知りました」と感嘆。火力発電は、発電量の調整役として電源の多様化を支える重要な役割を担っているのです。