日本人の心に迫ってくる作品
さて、シーズン1のもう1人の主役・鞠子は、最期まで按針に完全に心を開くことなく、「信仰」と「父の不名誉を償う」ために命を張ります。虎永は女性である鞠子にさえ、「そちの役目は、解っておろうな?」と、死を迫る。死んで大阪を討つ理由を与えよと言ったわけですが、このシーンはかなり怖い! 私が鞠子なら、こんなお役目断ります。
こういう日本精神が盛り上がってくると、外国人である按針はもう蚊帳の外。鞠子がなぎなたをふるって、大阪城の門を開けよと大立ち回りをするときも、城壁の上からただ見ていることしかできません。西洋人にすれば、「なぜそこまで義に拘るのか」は、理解を超えるでしょうし、現代人である私達にも、遠い物語。でも、私たちの身体の奥底にある日本人の血が、「この気持ち、なんかわかる!」と騒ぐのです。そのくらいこの『SHOGUN』は、私達・日本人の心に迫ってくる作品です。
「時代劇=チャンバラ」ではなく、「『SHOGUN』=日本人の美学の物語」なんですね。外国人でありながらここまで日本を理解してくれたクラヴェルさんには、敬意しかありません。見ていて泣きたくなるような、鳥肌が立つような、アメリカが戦後の日本の教育を根底から変え、日本人の魂を作り替えようとするほどに畏れた「大和魂・日本人精神」が、このドラマには見事に表現されています。しかし、そこまでして潰した日本精神の物語に巨額の富を投じ、作品とするアメリカとは、また不思議な国だなと思うのであります。
さて、このシーズン1で、非常に印象的だった女性がもう1人、いや、2人います。伊豆一の遊女と言われるお菊(演:向里祐香)と、その茶屋の女将・お吟(演:宮本裕子)です。
お菊は(たぶんお吟も)、按針を茶屋に連れてきた鞠子の気持ち(按針と相思相愛)にすぐ気づき、通訳である鞠子の立場を利用して、ある「プレイ」をしますが、そのエロティックなこと!!これは解説せずにおきますので、実際に見て楽しんでください。
また、江戸の城下町の一角に遊郭を作りたいと虎永に求めるお吟が何とも切ない。これも是非「本編を見て、色々感じていただければ」と。
兎に角『SHOGUN』はおすすめ! 見終わった時にきっと皆さんも、「日本人って、格好よかったんだ」と思うのではないでしょうか。