そのあとどうなったかって? 

聞くも涙、語るも長い物語が続くのだが、かいつまんで申し上げると、その魚屋さんにて、おいしい新秋刀魚をつつきつつ、急遽、作戦会議が開かれた。夜行バスは動いているか寝台列車はどうだ、大阪まで移動して翌朝、伊丹空港から飛行機で帰ったらどうだ、関空はどうだと、あれやこれや調べて……、実際にスマホを駆使して検索してくれたのは、H氏の有能秘書、大森君だった。

が、どのケースもバツ。飛行機はもはや満席だらけ。と、最後にH相談役が声を発した。

「米子空港から北回りの飛行機なら台風の影響は受けないぞ。空席あるか?」

さっそく大森君がスマホを睨む。なんとチケット予約ができた。バンザーイ! その晩は岡山に一泊し、翌朝早く車で岡山を出て北上。二時間後に米子鬼太郎空港に到着した。

でも、まだ油断はできない。羽田が大雨で欠航になったらどうする。その場合は普通列車で敦賀へ出て、北陸新幹線で帰ろう。

結果的に私とS子さんは敦賀を訪れることなく、飛行機で羽田に降り立つことができた。広島を出てから二十四時間が経過していた。

このたびの教訓。無理な願いを聞いてくれる心の広い友人は、全国の港港に持っておくことが大切だ。


最新刊『レシピの役には立ちません』が好評発売中

このまま食べたら危険!? 読んで美味しく、(作って)食べても旨い極上の料理エッセイ誕生!

珍しく父に褒められるからと、台所仕事をするようになって60年余。ケチだけど旨いもの大好きなアガワが立ち向かう、新たな食材、怪しい食材、そして腐りそうとおぼしき食材……。

料理に倦んだひとが今日もまた台所に立ち向かう元気がふつふつ湧いてくる名エッセイ誕生! でも、ちゃんとした料理人はあまり真似しないでね。


人気連載エッセイの書籍化『ないものねだるな』発売中!

コロナ禍で激変した生活、母亡き後の実家の片づけ、忍び寄る老化現象…なんのこれしき!奮闘の日々。読むと気持ちが楽になる、アガワ流「あるもので乗り越える」人生のコツ。