漫才の伝統からの脱却と進化

「THE MANZAI」は優勝者を決めるコンテストでありながらも、かつてのM-1のようなヒリヒリした緊張感はない、バラエティショーの側面が強い賞レースでした。これこそ漫才の伝統からの脱却と進化を引き起こした、象徴的な番組やと思います。

『答え合わせ』(著:石田明/マガジンハウス新書)

それは「THE MANZAI」が、「ウケやすさ」「笑いやすさ」に特化した大会だったからでしょう。

M-1は競技的な側面が強くて、お客さんも緊張した状態で見ています。素直に「面白いものを見て笑いたい」というよりは、「誰が一番面白いかが決まる瞬間を見届けよう」という意識が強いのかもしれません。

特に2010年までのM-1は審査員の点数もかなり厳しくて、今映像で見返しても、胃が痛くなりそうなくらいピリピリしているのが伝わってきます。

そこが「THE MANZAI」は大きく違いました。

M-1でひどくスベって苦い思いをした漫才師はたくさんいますが、「THE MANZAI」でそんな思いをした漫才師は、たぶんいません。僕らも2012年と2013年に出場したときは、めちゃくちゃやりやすかった。M-1とはまったく空気が違うと肌で感じたし、実際、ウケました。

それだけ「ウケやすい環境」やったんです。「THE MANZAI」のプロデューサーから実際に聞いた話ですが、これは偶然の産物ではなく、制作側の意図として、そういう「誰もが笑いやすい空間」を作っていたそうです。