新しい漫才の発明

ただ、これは、バラエティ色が強かった「THE MANZAI」を経て起こった突然変異的な変化ではなく、ずっと前に萌芽(ほうが)はありました。

漫才に新しい風をもたらした、いわゆる「システム漫才」の生みの親は、僕の中やとブラックマヨネーズやチュートリアルです。もとを辿れば、こうした新しい漫才の発明が、今の漫才の多様化につながっていると思います。

知ってのとおり、2005年はブラックマヨネーズ、2006年はチュートリアルと、立て続けにシステム漫才がチャンピオンになりました。

さらに2007年のチャンピオンは、サンドウィッチマンでした。前にも話したとおり、サンドウィッチマンの漫才は「設定上の役柄」を演じ切るコント漫才です。

こうして3年連続で伝統外の漫才師がM-1チャンピオンになった。M-1がいったん終了する前にも、すでに新しい潮流は生まれていたわけです。

その延長線で、ロングコートダディ、男性ブランコ、真空ジェシカのような「共闘型」漫才や、ランジャタイ、マヂカルラブリーのような、「被害者─ 加害者」構造は守りながら「見せ方」が奇抜な漫才が登場してきた。

こうして”超多様”大会っぷりが加速しているのがM-1の現在やと思います。

※本稿は、『答え合わせ』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。


答え合わせ』(著:石田明/マガジンハウス新書) 

本書は、漫才に対する分析が鋭すぎて、「石田教授」とも呼ばれている石田明さんが「漫才論」について語り尽くした一冊。「漫才か漫才じゃないかの違いは何か?」といった【漫才論】から、「なぜM-1ではネタ選びを間違えてしまうのか?」といった【M-1論】まで、漫才やM-1にまつわる疑問に「答え」を出していきます。読むだけで漫才の見方が一気に「深化」する新たな漫才バイブル、ここに誕生!