年齢とともに楽しくなったこと

不思議なことに、50代を過ぎてから、人づきあいがラクにできるようになりました。ちょうどその頃からテニスを始めたのですが、ダブルスを組んだお相手から「伊東さんって笑うんですね。安心しました」と言われちゃって(笑)。

進駐軍のキャンプで歌っていたときも、「ノースマイル」と、笑顔を見せないことを米兵に呆れられていたくらいですから、どれだけ無愛想なイメージだったんでしょう。それが最近では、しばらく連絡しないと「ご機嫌うかがいよ」って電話をかけてきてくれるテニス仲間もできました。

2001年から豪華客船「飛鳥I」のクルーズで歌わせていただくようになり、客席との距離感もグッと縮まりました。船内で過ごすお客様との交流が深まったおかげで、歌うことの楽しさをあらためて実感できるように。

娘(歌手の宙美《ひろみ》さん)と一緒のステージもやらせていただいています。私はずっとスタンダードナンバーが好き。それを日本語にアレンジしたものを歌うのが楽しいですね。

これまでの人生を振り返って思うのは、人間は決して一人では生きられないということです。幸せな人生を送るには、お金より人とのご縁が欠かせません。本音を言えば、お金で苦労しないに越したことはない。

とはいえ、ジムの会費やたまに外食できるくらいのお金があれば十分です。私の贅沢というと、愛犬にかける費用かしら。病院代や旅行するときに預けるペットホテルは結構高いの。

父の借金のことで恨んだりしたかというと、そんなことはないです。でも、税金や年金の支払いの紙が届くと、支払期限が1ヵ月先でも、届いた日に払いに行かないと落ち着かない。請求書がここにあるのがイヤなのよ。トラウマなのかもね。娘には借金だけは残したくありません。やはり苦労しましたから。

「お父さん、お酒をちょっぴり我慢して、私が稼いだお金で土地でも買ってくれていたら、私は左うちわで暮らせたのに」。もしもあの世で父に会ったら、それだけは絶対に言ってやりたいと思います。(笑)