しばらくすると、父が突然私を引き取ると言い出し、施設から強引に連れ出しました。父はこの時、女性関係でトラブルを起こし、裁判沙汰になっていたようです。

そこで考えたのが、子どもの養育を理由に情状酌量をしてもらうということ。私を育てる気などはなからないため、裁判が終わると、再び私を宮崎県にある別の児童養護施設へ預けたのです。

ここでも寂しい思いをしながら過ごしていると、施設の提案で里親制度を利用することになりました。里親制度とは、親の病気、虐待、貧困などさまざまな理由で親と一緒に暮らせない子どもたちの社会的養護のために、里親登録を行った家庭で養子縁組や養育を受けるというもの。

受け入れを希望する里親の家で体験宿泊し、互いに承諾すると、里親の元での暮らしが始まるという流れです。

さっそく1軒目の里親の元で体験宿泊を行い、とんとん拍子で委託されることになりました。しかし、なぜかすぐに児童養護施設へ戻ることに。2軒目、3軒目も同じで、委託が決まっては戻されてを繰り返すことになったのです。

まだ3歳だった私は、お泊まりごっこをしているくらいにしか理解していなかったものの、冷たい雰囲気の施設よりも、人の家の温かさのほうがいいなと感じていたのに……。

施設に戻される原因は父でした。里親が決まるたびに父がその家を訪ねていき、難癖をつけて金銭を要求していたのです。里親は驚きと恐怖で委託解除していたのでした。