無条件に愛される喜びを知った
けれど私が4歳になった時、奇跡のような素晴らしい里親さんとの出会いがあったのです。これまでと同様に、宿泊体験のあと里親の家庭へと迎え入れられました。父もまた、例によって家を訪ねてきたそうです。
しかし里親さんは、これまでの父の素行を知ったうえで、「私たちまでもが施設へ戻してしまったら、宏美ちゃんの人生はどうなってしまうのか。考えると、心配で眠れない。見守りながらしっかり育てたい」と思ってくれたのでした。こうして、ようやく私は安全で安心な場所にたどり着いたのです。
里父、里母ともに50歳で、実子3人は成人し、すでに自立していました。2人が私を本当の家族として育ててくれた日々は奇跡そのものでした。私は初めて、家族で食卓を囲み、無条件に愛される喜びを知ったのです。
なかでも里親さんの家でお風呂に入る時にかわした、里母さんとのやりとりは一生忘れられません。
「これからはずっとここにいていいのよ」
「本当? お母さんって呼んでいい?」
「いいよ」
「お母さん!」
「はーい」
親子なら当たり前のこの会話こそ、私がずっと求めていたものだったのです。