田舎という土地柄、近所の人たちにさまざまな噂をたてられていたと大人になってから聞きました。実父も相変わらず忘れた頃に訪ねてきては金銭を要求していたようですが、屈せずに私をずっと守って育ててくれた里親さんには感謝しかありません。

里親さんのおかげでのびのびと子どもらしい日々を送っていましたが、私が10歳になった時、実母が「会いたい」と児童相談所をとおして連絡してきたのです。

戸惑う私の気持ちに関係なく、面会が決まり、再会する日を迎えました。実母は駆け寄ってきて「ごめんね」と泣いていましたが、私はというと、母の顔をまったく覚えていません。

その後ろで里母さんは、心配で胸騒ぎが止まらなかったといいます。その後、実母との面会頻度は増えていき、私が12歳になった時に実母と暮らすことに。私に愛情をたっぷりかけて育ててくれた里母さんは、親権を理由に引き離されてしまう結果となり、ショックで寝込むほどだったようです。

私は動揺しながらも、実母と新たに親子としてやり直そうと前向きに考えることにしました。けれど実母の性格の根本的な部分は変わっておらず、暮らし始めて半年も経たずに些細なことで逆上し、「一切あんたの食事の世話はしないから!」と言い放ち、本当にそうしたのです。

けれど、運は私を見放していませんでした。多くの場合、里親関係を解除した後に連絡を取り合うことはないのですが、里親さんは私が離れた後も気にかけてくれ、時に家に立ち寄ってくれたり、段ボール箱いっぱいに食べ物を詰めて送ってくれたり、手紙や電話をくれたりしたのです。それは、私が結婚してからも続きました。

どんなに悲しいことがあっても、大変な状況になっても、見守り思ってくれている人がいる。その事実が私の心を救い、強くしてくれました。あの時、里親さんと出会わなければ、不運な人生だと思い続けていたでしょう。

私の生い立ちから、「苦労したね」と言われることがありますが、私は今、心の底から「いいえ、幸せです」と言えます。