教育のサービス産業化

教員側からすれば、できるだけ問題を発生させないようにしたいという心理になりがちです。

そして問題が生まれないようにと、ますます管理を徹底していくようになります。少しでも学校が荒れたら、それを正すために学習規律や生活規律を厳格化し守らせ、管理していく。また、生徒や保護者の視点から言えば「教師や学校にサービスを求める」という図式を加速させてしまったのだと僕は感じています。

つまり、良いサービスを「してあげる」のが良い学校や先生であり、親からすれば「学校が我が子にサービスを提供するのは当たり前」という考え方になります。

それによって学校の現場は、さらに大きな問題を抱えることになりました。

大人が何でもやってあげて与える側にいて、子どもは与えられることに慣れてしまう。そんな構図が、日本中の学校に定着していきました。

簡単に言えば、教育のサービス産業化です。

与えられるのを待つ姿勢が当たり前になった人間は、うまくいかないことが起こるたびに、他人のせいにしてしまうようになります。

いじめが起こるのは学校が悪い。子どもが授業を理解できないのは、教え方が下手な先生の問題だ。成績が伸びないクラスは担任の責任。

生徒も保護者もそのような考え方になっていきがちです。

※本稿は、『校長の力-学校が変わらない理由、変わる秘訣』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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校長の力-学校が変わらない理由、変わる秘訣』(著:工藤勇一/中央公論新社)

著者は『学校の「当たり前」をやめた。』で反響を呼んだ麹町中学校・前校長。現在、校長を務める横浜創英中学・高校の改革も適宜紹介。

その気になれば、校長はここまでできる! 全教員必携の経営論・人材育成論にして、保護者向け永久保存版テキスト。