てまりは吊し飾りの一部にも(写真提供:原口さん)

鳥肌が立つ美しさ

原口さんがてまりに出合ったのは40歳の時。博多の和菓子店で見た古典柄のてまりの美しさに、心を打たれたのだという。

「店頭に飾られていたのを見た瞬間、バーッと鳥肌が立ったのを覚えています。もともと針仕事は得意だったので、自分でもこんなてまりを作ってみたいと、すぐに通信講座で習い始めました。夫が転勤族だったため、引っ越しを繰り返しながら6年かけて師範に。ご近所の方に教えたりして、てまりが友達作りのきっかけになってくれました」

これまでに作ったてまりは数千個。小さいもので直径2.5cmほど、大きなものは22~23cmになる。柄にはその時の心境なども影響するため、二つとして同じデザインにはならないそうだ。

「過去にはオーダーされて50個以上のてまりを作ったこともありました。この歳でも目標を持てるのは本当に幸せなことです。『今日はX個売れました』と連絡が来れば嬉しいですし、どんな方が買ったのか、何と感想を言っていらしたか、教えてもらうのも楽しみ。お客様が求めるものを試行錯誤しながら作るのもやりがいがありますね」

今も1日2~3時間は針を動かす。週2回通うデイサービスでは、職員や仲間と壁に飾る小物を作って楽しんでいる。

「和菓子屋さんでの出合いが50年ものライフワークになるとは思いませんでした。てまりは日本の伝統的な遊具です。その魅力を多くの方に知っていただけるよう、手が動く限り作り続けたいと思っています」

2につづく

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