薬も予防接種もなし
翌朝。症状に変化はなくノロウイルスとの一戦にKO負け状態。それでも明日は日曜、病院が休みになる前にと、近所の内科へ顔も洗わず、風呂も入らずに向かう。たった400メートルほどの距離が5キロくらいに感じた。医者は私の症状を聞き、内診を終えて、腹部に触れると一斉に喋り出した。
「あ〜、もうそれ、ノロウイルスだね。検便しなくてもビンゴだよ。すごいのよ、最近。まずとにかく菌を体内から出さなくちゃいけないから、とにかく出して。絶食。水を飲んでもいいけど結局出ちゃうから。月曜までは家から出ないでね、家族はいる? 独身? あ、じゃあ心配ないけど、そうだな水曜くらいまでは誰かと食事をしないでね。回復食もね、ほらよくポカリとかうどんとか言うじゃない。あれじゃなくて、とにかく味のしないね……」
患者が気分の悪さで朦朧としている最中、医者はまくし立てるように病名、対策を話してきた。丁寧なことはありがたいけれど、情報として確かに覚えているのは自分が「どこかに不治の病を抱えたのかもしれん」とまで考える苛烈な症状なのに、薬も予防接種もないことだった。処方してもらったのは胃薬と整腸剤のみ……。
点滴を打ってもらい、幾分か楽になった状態で帰宅。医者はいろいろ言っていたが、なんとなく欲求がわいて、inゼリーを一口飲んだ。めちゃくちゃうまかった。ただたった一袋を1日かけて飲むという程度の食欲。情けない。ちなみにこの夜から翌日までとんでもない胃痛が始まった。これが症状の終盤。
翌日は茶碗一杯ぶんの白飯を小鍋でおかゆにして、1日かけて食べた。その様子を客観視しながら、体力回復を実感。人間ってすごい。