タマは捨て猫だった

そんなタマは、捨て猫だったことをご存じでしょうか?
タマは雨の中、段ボールに入れられて捨てられていた捨て猫でした。
ずぶ濡れでニャーニャー鳴いていた小さな猫を下校中のワカメちゃんが見つけ、こっそり家に連れて帰りました。
あまりにも痩せているからタマのように丸くなるようにとタマと名付けました。
家の物置でこっそりごはんを与えていたところ、お父さんに見つかってしまいます。
「ワカメ、汚い捨て猫なんか飼うんじゃない!元の場所に戻してきなさい!!」

ワカメちゃんは泣きながら重い足取りでタマを抱いて捨てられていた元の場所に行きます。
「ごめんね、タマ…」
自分の差していた傘をタマに差し掛けて駆け出すワカメちゃん。
鳴きながら追いかけてくるタマ。

そして、雨に打たれたワカメちゃんは風邪をひいて寝込んでしまいました。
どうしても捨てることができなかったワカメちゃんは、再びこっそりタマを連れ帰り物置に隠したまま。
それをわかっていた父・波平さん。
ワカメちゃんが寝込んでいた間、タマにごはんをあげていたのは波平さんでした。

越乃リュウさんが描いた「タマ」
越乃作「タマ」

「なついてくるとかわいいもんでな」
こうして波平さんになついて磯野家の飼い猫となったタマ。
ワカメちゃんの優しさが波平さんの心を動かしたほのぼのと温かくなるお話でした。

懐かしい昭和の安心感に浸りたくなり、『サザエさん』にチャンネルを合わせた日曜日の夕方。
磯野家の日常にさりげなくタマがいるという光景に、じんわり幸せな気分になります。
タマは地味ながら日本中の人に愛されている国民的猫なのです。