「顎」「舌」を鍛えることで、寝たきりや認知症を予防できる?

嚥下の要となる「舌骨上筋群」は、顎の内側の片側4種類の細い筋肉で構成されています。そしてこれらの筋肉を鍛える、ということは、つまり「舌」や「顎」を使うことになります。

オーラルフレイルは口腔機能の衰えと書きましたが、その状態により「口腔機能低下症」という病名で扱われます。2018年に厚労省により疾患指定された比較的新しい病気なので、聞き慣れない人が多いかもしれません。

ただ、病気ですから治療は必要ですし、治療しなければ悪化します。口腔機能低下症が発症し、治療をしなかった場合、発症していない場合と比べ、2年後に全身が衰えるフレイルになるリスクが2.4倍に。更に進行した場合、要介護状態になるリスクも2.4倍と、寝たきりのリスクがグッと上がることが分かっています。

そして4年後には死亡リスクが2.1倍にもなるので、命を危険にさらす可能性のある病気だと言えるでしょう。

口腔機能が低下しても、対策を行い治療すれば口腔機能は正常に戻ります。つまり進行してフレイルや寝たきり状態になる危険性を減らすことができるということです。その対策として挙げられるのが「顎トレ」「舌トレ」なのです。

噛むことは脳への刺激にもなり、認知症の予防になることが知られています。ところが口腔機能が低下すると噛む力(咀嚼力)も弱まってしまいます。つまり口腔機能を正常化して咀嚼力を回復させれば、しっかり噛めるようになって認知症対策にもなるということです。

また、口腔機能が低下している人は、口の中の環境も悪くなるため、歯周病を併発していることが多い。そして最近の研究で、歯周病菌はアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβを誘導することがわかっています。