好きな服は絶対に似合う

『おむすび』の話に戻りますが、歩は古着のバイヤーとして世界を駆け巡り、やがてブランドを立ち上げてCEOになります。好きな服を着ることでみんなが元気になれるなら、そのお手伝いをしたい、という歩の思いは私もよくわかる。なぜなら、服は、常に私自身を助けてくれるものだったから。

私の両親は長崎でアメカジのセレクトショップをやっていて、幼い頃から仕入れや展示会に連れて行かれ、洋服や雑貨を眺めながら親の仕事が終わるのを待っていました。年末には家族総出で福袋を作るのが恒例行事。

小さな田舎町なので、注文が入るとお客さんの顔を思い浮かべ、好みを考えて、似合うアイテムを組み合わせ袋詰めにします。福袋を開けた瞬間にパッと輝く表情や、好みの服を着てニコニコ笑顔になる人たちを私はたくさん見てきました。

私自身も、どんなに過酷なスケジュールでも、好きなものを身にまとっていれば乗り越えられる。21年にアパレルブランド「RE.(アールイードット)」を立ち上げたのも、「好きな服」の力を信じているからです。

私は幼い頃から洋服へのこだわりがすごかったようで。初めてのピアノの発表会だったかな、フリフリの花柄ワンピースを着せられたことがありました。ビデオが残っているんですけど、私はとてつもなく不機嫌。

「パンツが良かったのに、ピアノの発表会だからって、それっぽいのを選んだな」みたいな恨めしそうな目で周囲をにらみつけているんですよ。「好きじゃないものを着せられる」、それが何より苦痛でした。